U20のストライカーに告ぐ

高校野球の練習試合。
7回の裏。4点差くらいで負けていた。
終盤に差し掛かったこの試合。
追い上げるためには、なんとしてもこの回に1点取っておきたいとこだった。
先頭打者は6番レフト。
彼は初級をジャストミート。


打球は高校のグラウンドを囲む高いネットの、ライト側中段に当たった。
その下には白いテープが横一線に張られている。
その白いラインを越えた打球は、
そう、ホームランだ。
(このグラウンドはそういうルールだった。)
彼は意外と早くホームを一周しベンチに戻ってきた。
「ナイスバッティング!」
ベンチのナインは彼に声を掛けたが、彼は鋭くこう言った。


「まだ負けとんで!!」


その試合の相手がどこだったか、勝ち負けも覚えていない。


ただ彼の鋭い声と表情だけは忘れることができない。