坂の上の雲・日清戦争2

ハーディが、「新島は京都で学校をひらいたという。私はかれのキリスト教主義による日本人教育が成功することを祈っている」というと、小村は言下に、
「祈ってもむだですな。日本では成功しませんよ」
と断言した。

「日本の文化と歴史が邪魔をするでしょう。あなたがたアメリカ人は、日本をフィリピンかハワイのようにおもっているらしい。そういう土地に対してならキリスト教の伝道は大いに浸透するが、日本はキリスト教文明とは別系列にしてしかも堂々たる文明とその伝統をもってきている。日本人は西洋の技術はまなぶが、しかしそれに付帯するキリスト教文化というものについては容易に許容すまいし、したがって新島襄の事業はあなたが期待するほどには成功しないでしょう。」

なるほど、確かにその通りである。
文化をどの程度間で広げて解釈するかによるが、現在の日常生活、冠婚葬祭、一般常識と照らし合わせてみると、明治初期に小村寿太郎が考えていたことは、かなり的確に日本社会の背景を捉えている。
現在でも、クリスチャンは国民全体の1%で、それ以上布教が進まないことから「1%の壁」と言われているらしい。