ZONEの先に聞こえてくる音。

日曜日にスポーツニュースを見ていて、ふと目をそらして他の作業をしているときになにやら「カッ、カッ、カッ、カッ」とテレビから音がしてきた。
何の音だろうと画面を見るとスピードスケートのスタートの音だった。


http://www.nikkansports.com/ns/sports/f-sp-tp0-051120-0011.html

そして、スピードスケート短距離で、清水宏保選手と加藤条治選手に続く、「第三の男」として注目されるスタートの得意な及川佑選手。
http://www.bs-n.co.jp/spomaga/lookback/now/194.html

ということで、見ていたのはNHKサンデースポーツのロード・トゥ・トリノだと分かるわけだが・・・


この日はインサイドでやっていた

プロ野球を目指す選手の受け皿となるべく、今年からスタートした「四国アイランドリーグ」。プロ野球とは違う独立リーグという環境で戦ってきた選手がどんな成果をあげ、18日のドラフト会議を迎えたのか、その思いに迫ります。

という内容を見たかったのです。


以前書いた、ハンマー投げの室伏選手に関するエントリー(○○ is silver, Silence is gold. - 消費という名のクリエイト行為)と少しかぶるが、スポーツ選手にとって音はかなり重要なファクターだと思う。
足音のリズム、風を切る音、呼吸音。それぞれのスポーツごとに独特の音があって、選手はその音の微細な変化を感じ取ることによって調子の良し悪しを判断しては、競技に臨んでいる。


スピードスケートのスケートがリンクを削る独特な音にも選手にしか分からない世界が詰まっているに違いない。
ずいぶん前だが、http://www.nasu-summer.com/を見たときにトライアスロンをしている人がこう言っていた。
「レーサーの金属音がすごくリアルだ。」
自転車競技では体力トレーニングや技術練習と同様、レーサーのメンテナンスも重要なスキルの一つなのだろう。そのなかでレーサーの異常音を聴き分ける耳も養われていくに違いない。


音は時に映像以上にリアリティを喚起する。
普段から人は無意識に必要な音と不必要な音を分けて聞き分けている。車の音、エアコンや冷蔵庫の音、雑踏の音。これらの音は無意識のうちに削除されている。
スポーツの場面ではこの聞き分けはさらに拡大しているだろう。集中力が高みに達しゾーンと呼ばれる領域に入ると、聴覚や視覚が敏感になり時間間隔も普段よりゆっくりに感じるといわれている。
が、テレビのビデオカメラ等は必要な音と不必要な音を分けることなく拾ってしまう。
一方、映画の音は作品の完成度を上げるために編集を加え、より世界に浸れるように、よりアディクションが高まるようにつくられている。
テレビを見ているときになんとなく非現実的な感覚を覚え、映画を観ているときになぜか自己投影してしまうのはそういうところにあるのかもしれない。