4月7日WBS ゲスト梅田望夫氏 ウェブ進化論

小谷C「スタジオに、こちらのウェブ進化論という本が大変反響を呼んでいますが、この著者でいらっしゃいます梅田望夫さんにお越しいただきました。よろしくお願いいたします。」
梅田「どうぞよろしく。」
−−−−−−−−−−−−−


小谷C「本質的に何が進化したのかというのがいまひとつよく分からないのですが。」
梅田「この50年以上の歴史の中でまず計算能力というのが、どんどんタダになる方向に進化してきたのです。それで我々はものすごくたくさんのことがPCの上で得きるようになった。それで今度は通信の能力というのがこれもやっぱりどんどんタダになる方向に進化してきた。それでインターネットの世界というのになってきたわけですけど、これからさらに記憶容量、記憶能力というのが、これもほとんどタダになる方向に進化していく。例えば世の中にある全ての映像とか音楽とか、そういうものもほとんどタダで格納できるような時代がやってくる。ということです。」
小谷C「でも実際ものすごくお金がかかりますよね。そういうものをストックしようと思うと。」
梅田「はい、そのコストがどんどん下がっていくのがこれからの重要な部分です。それでタダになっていく3つの能力というのが相乗効果を起こして、インターネットの空間というのはほとんど情報に関して言えばゼロコスト空間とでも言いましょうか、何をやるのもタダでできる。そういう空間へ進化しようとしている、と思います。」
小谷C「一方で私達のリアルな社会があって、その隣にその空間が、また別にできると。」
梅田「そうですね。リアルの世界というのはリアルの世界でどんどん普通に進化していくと。その横に全く違う法則で動く空間がポコッと生まれたという、そういう感じに捉えるべきなんじゃないかなと思います。」
小谷C「その進化によって、具体的にはどんな様なことが起きてくるのでしょうか?」
梅田「例えば、1万人とか10万人とか100万人とか、普通の生活者にとっては不特定多数無限とでもいうような対象の人たちと繋がったり、あるいは共同作業をすることができたり、それが今申し上げたコストゼロ空間だからほとんどタダでできる。だから何ももっていない個人が何かやろうと思えばそういう人たちと繋がって何かおもしろいことを始めるということができる。そういう時代だと思います。」
小谷C「短く伺いたいのですが、アメリカの大学生で今、顕著に現れているものがあるんですって?」
梅田「そうですね、脳が繋がっていくというような表現をするとものすごく分かりやすいかもしれないんですけれども、例えばアメリカの企業が大学生のインターンを雇います。今のアメリカの大学生というのは自分の友達300人とか400人とかが常時インターネットに繋がっているんですよ。そうすると300人の中にはコンピュータのプログラムがものすごくできる人がいたり、そのいろんな能力を持った人がいますよね。だからインターンに行った会社で『君これやってください』といわれると自分がそのことをやれる能力が無くても、すぐにインターネットの中に繋がっている友達の中にその誰かを見つけて『おい、これどうやってやったら良いんだ』と5秒くらいで返事が帰ってきて、それでなんかやっちゃうと、そうすると企業側の人はビックリすると『この人は何でもできる人だ』と。」
小谷C「社員よりも仕事ができる学生ですね。」
梅田「それが脳が繋がっているというイメージなのかなと思います。」
−−−−−−−−−−−−−

ロングテール
小谷C「今までとは何が違うのでしょう?」
梅田「今までとはコスト構造が違います。リアルの世界とネットの世界です。さっきコストゼロ空間と申し上げましたけども、そのコスト構造が違うために、これまでもロングテールというところの潜在需要はあったんですよ。ところがその潜在需要を追求することがリアルの世界のコストをかけては、やればやるほど損になる。だからそんなことをやる人は誰もいなかった。ところがネットのコストゼロ空間ということ利用すれば、その小さなビジネスの集積、ちりも積もれば山となる、その塵を集めるというのがコストが安くなったからそれができる。そこが本質です。」
−−−−−−−−−−−−−
小谷C「先ほどのロングテールもそうなんですけれども、やはり実物のものを売るというのはネットの中であれ、非常にまだリアルの世界、リアルの社会に近いと感じるんですね。たしか本の中で、いずれネットならではの革命的な変化がものづくりという形でネットの中で現れるようになる、とおっしゃっていますよね。これはどういうことですか?」
梅田「さっき申し上げたような不特定多数無限という人たちが、少しずつ協力しあって何か大変なものをつくってしまう。そういうような事例ができ始めています。例えばウィキペディア。先ほど映像の中にもチラッと出てきましたけど、誰でも参加してつくれる百科事典。」
小谷C「ネット上での百科事典ですよね。」
梅田「はい、ネット上に場ができていて、そこにはどんな人も、何の資格が無くても、そこの百科事典のある項目に書き込んだり、訂正したり、そういうことができる。誰にも開かれた百科事典。普通百科事典というのは学者の先生達が集まって何年もかけて、ものすごく大きなコストをかけてつくる。ところが全くお金をかけずに、インターネット上に場を作って誰でも参加できるというふうにしただけで、高々5年くらいで世の中にある百科辞典よりももっと充実した百科事典ができてしまった。こういう事例があるわけですね。ただソフトウェアの世界でも同じようなことが起きていると思います。」
小谷C「今おっしゃったのだと、例えば世界の人と繋がれば。これだんだん人数は増えていくんですけど、かかる時間、出来上がるはどんどん短縮されていくということですか?」

梅田「つまり100人が100時間かけて働くということと同じ価値というのは、10万人が6分ずつ何かをすれば、理論上価値が見つかるわけですね。ところがリアルの世界では10万人の仕事量6分を集めてくる仕組みはないし、つくろうと思えばコストがべらぼうにかかってしまって、こんなことをする人はいない。だけどネットの上ではこういうことをコストゼロで集めることができるから、今のウィキペディアのようなことが起こる。」
小谷C「それは今実際に、ネット上で百科辞典がそういうかたちで作り上げられている。ではソフトウェアが10年後ネット上でできるというのはどういうことですか?」
梅田「そうですね。インターネットの向こう側には何百万人というプログラマがいる。あるいは何千万人かもしれない。そういう人たちがちょっとずつ仕事を分担しながら、今までは企業がものすごくお金をかけないとできなかったようなソフトウェアがつくれるようになる。そういうことですね。」

小谷C「ということは、今は企業が発注してゲームソフトをつくっていたものを、例えば企業がネット上で大勢の人に振ってつくるということが可能になってくるということですか?」
梅田「そういう可能性もあると思います。」
小谷C「しかし不特定多数の人ですから企業もある程度リスクをとらないといけなくなると。」
梅田「そうですね。企業が自らを開放的な存在にどこまでできるか。そういう競争の時代に入ってくるんじゃないかと思います。」
小谷C「でも百科辞典以外のものでも、このゲームですとかいろんなものができるようになる。」
梅田「そうですね。映画だって音楽だってあるいは場合によってはハードウェア製品の設計図。つまり情報だったら、それはみんなでネットの上でつくれる。」
小谷C「設計図までは。」
梅田「までは」
小谷C「それで、つくるのはまたリアルの世界に戻すと。」
梅田「はい、そうです。」
小谷C「個人でも良いわけですよね。別に企業でなくても。」
梅田「そうです。意欲さえあれば個人にもこういう可能性が開かれているというところがネットの本質的なおもしろさだと思います。」



ロングテールチープ革命WIKI
ミクロなジャンルが集積することで新しい巨大なマーケットが開拓され、一方では場に集まった多数が知を提供してモノを創る。
世界を変えるのは一部の指導者ではなく、名も無きアルファとその模倣者たち。
ネットの世界では情報の消費はただの消費ではなく、クリエイト行為となる。


おそらくホリエモンはこんな概念のさらに進化したものを考えていたんだと思う。
大衆を扇動し世の中を闊歩する現在のマスメディアはネットに存在するミクロメディアの集合体に駆逐され、世界をリードするのは名も無きアルファとその模倣者たちとなる。
その総本山として君臨し、すべてのプロデューサーとしてのライブドアホリエモンを想像していたのかもしれない。
しかし、「リアルの世界というのはリアルの世界でどんどん普通に進化していく」。
さらに日本の格差社会のなかで生まれる一番の格差は「情報格差」であり、低きに流れたものにとって、マスメディア必要不可欠なものであり続ける。
進化した概念を先取りしすぎたホリエモンは現代の信長だった。


ホリエモン無き次は誰だ。「脳が繋がっている」ということを考えれば一人のカリスマではなくやはり名も無きアルファたちとその模倣者(消費者)だ。
さぁ、次の時代を創るために情報を模倣し消費する時がやってきた!!(はてブで)