俯瞰

高校の野球部だった頃、ちょっと変わった練習をしたことがある。


5〜8桁の数字が並んだ紙を一瞬だけ見て、その数字を答えるという練習。
ちょうどその頃テレビでも瞬間視の番組が組まれていて、イチローが抜群の成績を残していたことから、野球部の練習にも取り入れてみようということで冬季オフや雨の日のメニューの一つとなっていた。


この瞬間視、5、6桁程度なら左から順番に覚えて応えることができるのだが、7、8桁になると追いつかなくなる。
ポイントは読んで覚えることではなく、数字の形を目に写すことだ。
一瞬だけ見える数字の形を目に写し取り、しかる後にその残像を読むのだ。


これが野球にどうつながるかというと、
投手が投げるボールに対して焦点を合わせて直接追っていては、レヴェルが上がるにつれとらえるのが難しくなることに加え、キレ味鋭い変化球にも対応できなくなる。
そのため、目で直接追うのではなく、ボールの軌道を目に写る残像としてとらえて打つのが良いということだ。


実戦においては相手投手の野球帽のマークのあたりを中心にもやもやと見て、ボールの軌道をとらえるのが良いそうだ。

一枚の葉にとらわれては木は見えん
一本の樹にとらわれては森は見えん
どこにも心を留めず
見るともなく全体を見る
それがどうやら・・・
「見る」ということだ


バガボンド(4)(モーニングKC)

バガボンド(4)(モーニングKC)


よく言い表していると思う。


柔道の田村亮子選手は、試合中に相手と自分を真上から見下ろすもう一人の自分がいる、という。

心が何かにとらわれれば
剣は出ない


この満天から見下ろせば
胤舜も俺も変わりはない


バガボンド(7)(モーニングKC)

バガボンド(7)(モーニングKC)


最近再び夢中になっている「バガボンド」だが、一番好きなのは宝蔵院胤舜編。

勝負によって相手が死ぬことなく、逆に勝負を経ることで活きる道を得ていく過程が良い。
胤舜のキャラクターも沢北か仙道かを彷彿させる感じでわくわくするし。


斬るか斬られるかの勝負。
自分にとってはもちろん野球だ。
軟式草野球だけどそれなりに本気だぜ。